3日間にわたる観光産業委員会の審議が終わった。
主な論点のうち、新たな文化施設に関して再び書こうと思う。
こうしたことは事実を1つ1つ積み上げていくことが大事だ。
県・秋田市が新たな文化施設を作ろうとする理由は大きく3つある。
?県民会館(県)、文化会館(市)ともに老朽化し、耐震化など今後大規模修繕が必要となる。
?県民会館は設備も古く、時代に合わない建物構造となっているなど、利用や鑑賞の環境として適さない状況となっている。
?今後の人口減少を見据えたとき、2つの施設を県・市それぞれが所有して維持管理していくより、1つにしたほうが施設の運営や維持管理コストなどが安くすむ。
これらがいわゆる「新たな文化施設の必要性」だが、これに事実的な裏付けを付けていく必要がある。
それを私は今回の議会でしっかりやりたいと思っていた。そもそも新しいものを作る必要があるかどうか、を判断しなければ、どんなものを作るか、という議論にも入れないからだ。
<問い> 県民会館、文化会館の人件費も含めた維持管理費はいくらか。
<答え> 県民会館は1億2千万、文化会館は2億2千万。
<問い> 今後、耐震化など大規模修繕が必要とのことだが、それはいくらかかるのか。
<答え> 県民会館は平成6年に耐震化を含めた大規模修繕を行ったが、築50年を超え、建物そのものの耐久度として建て替えを考えなくてはならない時期。文化会館は、築30年を超え、今後大規模修繕が必要となるが、その金額・時期等は不明。
<問い> 新たな文化施設ができれば、現在の県民会館は取り壊しの方針とのことだが、文化会館はどうか。
<答え> 市の所管だが、文化会館をどうするかは未定。
委員会での質疑はこんなふうにして進んでいく。
細かい点はほかにも多々あったが、非常に重要な事実がこの質疑に含まれているので、この部分だけを書きだした。
つまり、県民会館は既に耐震化は終わっており、文化会館はいつどのぐらいかかるかは不明ということであり、「今後、大規模修繕が必要となる」ということへの数字的裏付けがまだ弱いということだ。
また、もっと重要なことは、文化会館の存廃が決まっていないということだ。
一般家庭においてテレビを買い替えるときに、今あるものを引き取ってもらうか、誰かにあげるか、はたまた別の部屋で使うか、そのぐらいのことは決めてから家電量販店に行くわけで、今あるものをどうするかさえ決めずに、新しいテレビの性能や大きさを議論するなどというのはナンセンス極まりないのである。
どうも巷では、「あのあたりに建つようだ」とか「5000人規模を」といった、先走った、そして、誤った情報が流れているが、委員会での議論を見ていただければわかるとおり、建設の前提条件はまだまだ整っていないのである。
こうした議論や事実の積み上げの果てに、初めてこの「新たな文化施設」の是非が判断できるし、コスト比較が全てではないとはいえ、現在の2施設の「維持管理費+修繕費+(取り壊すとすれば)取り壊し費」と、新たな施設の「建設費+維持管理費」の比較ぐらいはしないことには、県民の皆さまから笑われてしまうだろう。
現時点で、もう文化施設が出来上がるかのようにお話される議員の方がいらっしゃるなら、それは、そうした議会の中での議論をまったくせずに、すっ飛ばして、希望的におっしゃっているに過ぎないし、血税をお預りする立場にある議員にある者として恥ずべきことである。
また、新たな文化施設を作ることが「県・市共同のプロジェクト」と県当局が言うのならば、今あるものの存廃や、将来にわたってのコスト比較・シミュレーションそういったことも共同でやってこその「共同プロジェクト」であり、日の当たる、「作ること」だけが共同ではないことを肝に銘じて当たっていただきたいとも思う。
仮にこの施設が出来ればまた50年にわたって県民・市民に使われることになる。今の子どもたちや若者たちにこそ長く愛され、使われる施設にならなくてはいけないが、彼らはこの新施設建設の是非の議論に直接的に関わることはできない。
だからこそ、知事・市長、県議会・市議会、民間事業者など今、オトナの私たちが責任を持って、未来の世代からの付託を受け、判断をしなくてはいけない。
私としては、未来の政治家たちから笑われないように、あらゆることを考えながら、真剣に議論を積み上げながら、この施設について判断をしていきたい。
秋田市議会においても、文化会館の現状や将来コスト、そして存廃などについて真摯な議論が行われることを望みたい。