6月議会が閉会しました。
最終日の本会議において、次のとおり討論を行いました。
大変長くなりますが、スタジアム整備に関する私と佐竹知事の質疑などについても大きく報道されることになった中で、自分なりに論点を整理し、討論を行ったものですので、もしお時間があればご一読ください。
議案第115号平成29年度秋田県一般会計補正予算について、一部事業予算の執行を留保することを要請した上で、その他の予算については原案どおり賛成との立場から討論を行います。
まず、今回の予算案については佐竹知事の改選後初の補正予算ということで、知事自身が自ら公約に掲げられた政策について、それを具現化するための各種事業が盛り込まれており、民意を得て当選された知事の公約をよりスピード感をもって実現していただきたいという気持ちを私自身も持っておりますし、全体として異を唱えるものではありません。
しかし一方で、これから申し上げる3つの事業については、その予算執行の前提となる諸条件が整っておらず、その条件が整うまでは予算執行を留保すべきものと考えます。
まず1点目は、スタジアム整備のあり方検討事業、89万2千円です。
今議会において、私も含め、多くの議員から、スタジアム整備に関してスピード感をもって取り組むよう意見が出されましたが、知事は「何も決まっていない」「反対意見も多い」といった極めて慎重な答弁に終始したばかりか、署名運動についても「求めるのは勝手」あるいは、「県議会で決めてくれ」といったむしろ後ろ向きともとれる発言さえされました。
知事は、今から約4か月前の3月15日、ブラウブリッツ秋田の岩瀬社長と後援会会長が17万9412筆の署名をもって知事と秋田市長のもとを訪れたときのことを、ご記憶されているでしょうか。
そのとき知事は満面の笑顔でこのように発言されております。
「18万というのは非常にすごい数字で、我々もかなりプレッシャーを感じています。サッカーファンのみならず多くの皆さんが、好感をもって受け止めている証拠ではないかと思います。頑張っていい成績を残すことが、ますますこの18万人の力を20万、30万位の力にするんです。そういうことでこの署名を受け止めさせていただきます。我々もしっかりやります。」
いかがでしょうか。
4か月前、ここまでおっしゃって、18万人の署名の重みをずっしりと受け止めたはずの方が、選挙を挟んでたった4か月で、「求めるほうは勝手。お金をだすわけじゃない」と言ってしまう。私は果たして同一人物だろうか、とさえ思ってしまいますが、この発言は極めて不誠実で、県民の政治不信に繋がる重大な問題発言です。
誰かに強制されたわけではなく、ご自身がこの重みを受け止め、公約に掲げられたはずの知事の今回の発言をこのまま容認した状態で、検討会議をスタートさせることは、知事の政治姿勢のみならず検討会議の実効性や議会審議の妥当性まで揺らぎかねません。本日この後、閉会後に行われる記者会見において、18万人の方々に明確に謝罪をし、発言を撤回していただきたい、そのことを予算執行の留保条件として強く要請いたします。
また、署名をした人間は一人1万円の負担を、という発言についても、私はなぜスタジアム建設についてのみ、そのように発言されるのか、行政のトップとしての見識を疑わざるを得ません。全国各地で、毎日のように様々な署名活動が行われています。拉致問題の解決を求める方もいらっしゃいますし、医療や福祉、障がい者支援の充実を求める方々もいらっしゃいます。知事はそういう方々に対しても、その趣旨に賛同して署名するなら、納税義務のほかに何らかの負担を果たせとおっしゃるのでしょうか。小さなお子さんやお金がないがスタジアムに夢を託す若者にも金を出せ、と言いますか。
文化施設であれ、なかいちであれ、スタジアムであれ、1つの団体、1つの企業で到底負うことができない巨額の財政出動について、その財源問題を解決するのはまさに政治の力、政治家の力量であります。
新人候補ならいざ知らず、現職の佐竹知事が、財源問題の目途や青写真すらないままにご自身の公約にスタジアム整備を掲げられたとは私は思いたくはありませんし、今から5年後には財源がどこからか降ってわいてくるわけでもありません。財源問題を理由に検討のスピードを落とすことなく、関係自治体、クラブ、スポンサーなどと真摯な議論を政治主導で行っていただきたくことを強く求めます。
2点目は、着地型インバンド誘客促進事業100万円です。今回の旅行会社への出資に関しては、公共性や新規性を理由に、また会社側からの依頼があったことを踏まえ、出資を決めたという答弁がありました。
そしてまた、佐竹知事はこの新会社に限らず「これからもケースバイケースで出資する」という答弁がありましたが、県は行政改革という流れの中で、むしろ第3セクターの統廃合や出資の引き上げによる純粋民間セクターへの移行などを推し進めてきたわけですから、その方針を転換し、ケースバイケースで出資するということであるならば、出資に関する客観的なルールを県として調えておくべきであります。
つまり、どういった条件が整えば出資をするのか、どういう基準で出資額を決めるのか、出資したあとは具体的にどういう役割を県が担い、経営責任や県民への説明責任や情報公開をどう果たすのか、こうしたルールが全くないまま、公共性や新規性といった曖昧な概念論だけで出資を行うのは、行政としての公平性、公正性がその時々の為政者の政治判断や人間関係によってゆがめられかねない問題だと私は考えます。
既にこの新会社は県の追加出資がない状態で問題なく営業を開始しているわけですから、追加出資を性急に行う必要はありません。民間企業への出資ルール、出資基準を県が明らかにし、公正かつ公平なルールが整った段階で追加出資を行うよう要請いたします。
最後、3つめの事業が、秋田県立美術館展示機能強化事業7983万9千円です。今回の一連の質疑においては、議会側も認めたとおり、審議が不十分な点があったことは否定できません。私自身の反省も含めて敢えて申し上げれば、我々議会は、政策や予算事業の目的や趣旨という定性的なものを審議するだけではなく、その目的達成のための予算額の根拠や妥当性、必要性、効果などを定量的に把握し、チェックすることが求められております。
そして、私たちは確かに建築のプロではありませんが、政治のプロであり、当局の皆様は行政のプロです。県民が簡単に知ることのできない情報や、使うことができない巨額の予算を使っていくことに対する矜持と責任を一瞬たりとも忘れることなく審議の質を高めていかなくてはならないと改めて感じました。
その上で、当局側にも議会審議に当たり、説明や姿勢に問題があったように感じています。知事は、ご自身が設計等に関わるタイミングがなかったことを理由に、わずか4年で二重投資を行うことに対して、どこか他人事のような答弁で反省の弁はありませんでした。また、教育委員会においても、今日の新聞報道によれば「オープン後になって、利用者側のニーズを満たしていないことがわかった」といった説明をされているようですが、こうした理屈がまかりとおってしまえば、行政の継続性はどこにいってしまうのか、という気持ちがいたします。
後からわかった、自分はかかわっていない、というような態度ではなく、二重投資を招いたことについては真摯に反省をしていただきたいと思います。たとえ、国の交付金で半分補てんされるとしても、もう半分の3900万は、設計時に利用者目線で十分に練られていれば、今、県民が負担をしなくてもよい費用です。そのことをしっかりと受け止め、今後の文化施設整備などでも「後から分かった」などと言うことがないよう取り組んでいただきたいと思います。
そして、その改修にあたる前に、解決していただきたいことが1つあります。三か月間全面閉鎖となる間の指定管理者やカフェ運営事業者の損失です。三か月間全館閉鎖ということは、そこの管理業務に従事しているスタッフの業務の大半がなくなりますし、カフェを運営する事業者にとっては売り上げがゼロとなります。
しかし、指定管理者は指定管理料を原資とし、カフェ事業者は売り上げを原資として、スタッフや従業員に賃金を支払い、生活を保障しています。三か月の閉鎖はいわば不十分な設計を行ったことによる県側の自己都合的な改修ですので、こうした指定管理者やカフェ事業者、そのスタッフらの賃金や暮らしにマイナスの影響がでないよう、県として対応すべきであります。利用者は別の会場を探すことができますが、この美術館で賃金・雇用を得ている方々は別の会場というわけにはいきません。このことについての対応策がしっかりと図られた上で、改修に取り掛かるよう要請いたします。
以上、3つの事業については、その予算執行前にそれぞれ然るべき対応をとることを再度強く要請した上で、私の討論といたします。