「地方なくして日本なし。」
「地方の活力なくして日本の活力なし。」
こういう言葉が言われ続けてきた。
これに反論する人、反論できる人は少ないだろう。
日本の高度経済成長は、地方の労働力が大量に首都圏に流入して達成された。
経済成長と人口移動には深い相関関係がある。言うまでもなく、「景気のいいところ」、「仕事のあるところ」に人は集まるので、景気が良くなればまず地方から首都圏に人が流れる。
結果、皮肉なことに日本の景気がよいときほど、秋田から若者が出ていく。これは戦後の秋田県の人口動態を見れば明らかである。
人材、エネルギー、食糧・・・様々なものを地方は首都圏に供給し続け、それに対して地方が正当なる見返り、評価を得てきたかと言えばそうではないと私は思っている。
今、政府が「3本の矢」の3本目として、成長戦略をまとめようとしている。
どれもこれも「小粒」で「いつか通った道」ばかりだが、私自身の強い思いとしては、最大の成長戦略は、「地方分権」だと思っている。
東京一極集中を是正し、地方に権限と財源を与え、税制も含めて各地域が自由に設定できるようにする。そのために道州制が必要なら道州制を大いに推進するべきだとも思う。
しかし、どうも今の自民党政府はそれとは逆の方向に行こうとしているようだ。
「都市高齢者 地方受入れを模索」との報道があった。
首都圏でこれから爆発的に増える要介護高齢者。これを首都圏で対応しきれないので、地方の施設で受け入れてもらう、ということが政府で議論されている。
ここで重要なのは定年退職後の元気なシニア、ではなく、介護が必要な高齢者であるという点だ。
医療・介護分野で地方に雇用が生まれるという意見も出されたようだが、正直、冗談じゃない、というのが私の率直な気持ち。
言葉は悪いが、地方を首都圏の「姥捨て山」のように使われたんではたまったもんではない。
本当に地方受入れを考えるなら、要介護になる前に、50代後半あるいは60代前半からの地方移住を政府が「制度」や「法律」によって本気で後押しすべきだ。地方で暮らし、地方のコミュニティに入って、その地域の一員として老いを迎え、やがて命を終えるというなら話はわかる。しかし、そこに手を付けないで、介護高齢者だけを受け入れてくれ、などというのは地方蔑視の最たるものである。
もう1つ。
安倍首相は首都東京での特区構想の検討を指示したとのこと。
特区の内容は、現在40.7%の法人実効税率を、都心などに限って、シンガポールや香港なみの20.2%に引き下げるといったものだ。
これが実現すると確かに首都圏は潤うだろう。
しかし、地方でこそ、こうした軽減税率が必要なはずである。
これではまるで、「お金と企業と若者は首都圏へ」、「食料と自然と高齢者は地方へ」と言わんばかりではないか。
こういう東京一極集中の流れの先にあるのは、取り返しのきかない地方の疲弊と、呆れるほどの格差社会の到来だろう。