何度聞いてもよくわからない、というのが正直な感想だ。
いや、「感想」などという言葉を使っている場合でもない。
岩手県からのがれき受け入れや、あるいは大館市などでの焼却灰の受け入れなど、一連のことについて、佐竹知事は、「積極的」とも受け取れる発言を繰り返している。
9月議会においても、議会からは「受け入れるな」との声までは出なかったものの、慎重な対応を求める発言が相次ぎ、その時点では、あくまで「どういうものをどういう形で、どのぐらい受け入れてほしいということなのか、その事実を確認している」というようなスタンスであったと記憶している。
しかし、昨日の知事の定例記者会見では、
「この世の中に100%安全なものなどない、それが物理学の法則。」
「産業振興と言いながら、それに付随するものを拒否するというのは論理的におかしい。」といった、明らかに受け入れ推進の立場と取れる発言がいくつかあった。
受け入れを推進する理由はどうやら、上記の発言から察するに、県北部のリサイクル企業、その一連のグループ企業のことが念頭にあるようだ。
ご承知のとおり、県北部のリサイクル企業は、県内屈指の大企業であり、県北部ではそのグループ企業も含め、地域の雇用、産業振興などにおいて欠くべからざる存在となっている。
秋田県においても、この企業を中心にして、「リサイクル産業」を進めるため、特区構想を提案するなどの取り組みを行っているところだ。
この企業にとって、これまで続けてきた焼却灰の受け入れ、埋め立て処分などの事業は、柱の1つでもある。
となれば、秋田県にとって必要な企業 → 必要な企業にとっての必要な事業 → 秋田県にとって必要な事業 ということになるだろうか。
それならば、それはそれでいい。
しかし、冒頭、何度聞いてもわからない、と書いたのは、1か月前、かなり強い口調で受け入れについて「否定的」とも取れる発言をされていた知事が、どういう判断の転換があったのか、その点が定かでないということがまず第一点、そして第二点目が、もし、「産業振興という観点から」受け入れ推進に転換したのだとすれば、その根拠を県民に示すべきだということである。
つまり、灰やがれきを受け入れることが、どう産業振興に繋がるのか、どの程度の企業の収益、そして県の税収に結び付くのか、こうしたことが全く明らかでない。
受け入れた場合の経済的メリット、が示されていないのに、危険性のあるものを受け入れよう、どうせ世の中には絶対安全なものなどないのだ、という説明だけが独り歩きしている。
余談になるが、県庁にいた頃、秋田県内の様々な業種ごとに、その労働生産性を比較してみたところ、この「リサイクル産業」というのがずば抜けて労働生産性が高い。
つまり、リサイクル産業というのは、ほとんどが器械設備によってオートメーション化されており、企業の規模・収益に比べて、雇用されている人数は相対的に少ない。
そういう特性を持っている業種において、灰やがれきの受け入れ・処分という事業が、どの程度の収益性、雇用効果、地元自治体への税収その他の経済効果をもたらすか、ということは、知事からも、企業側からも県民に対して説明がない。
ただの美徳や観念論ではなく、「危険」を受け入れるものと引き換えに我々県民が得る経済メリットがあるというならば、それを示すことが、「受け入れ判断」の第一歩ではないだろうか。
今のままでは、県民の皆さまは到底納得しないのではないか、そのことを私は大変危惧している。
これは一企業の問題ではなく、秋田県全体の問題である。
県民が判断しうる、選択しうる、最大限の情報開示を速やかに行っていくべきではないだろうか。