「形式的な処分は何の意味もないですよ。本当に処分と言うんだったらバットでぶん殴るのが処分ですよ。」
行政トップの佐竹知事から驚くべき発言が出た。
今週月曜日、28日に行われた記者会見での発言だ。私自身、時間がなく、今日になって会見録を観た。
県のHPに会見録も会見動画もアップされているので興味がある方はご覧いただきたいが、見事にマスコミ各社の質問とかみ合っていない。
心身障害者扶養共済の掛け金を県が長年にわたり誤納していたことにより、県に約50万の損害を与えたとして、県監査委員会から、誤納期間中に在職した担当課長に「重大な過失があった」と指摘した上で、県として損害回復を図るよう勧告があった問題だ。
私見を敢えて挟まずに、この日の記者会見冒頭からの流れを追ってみる。
まず、誤納期間中に在職した担当課長など関係者が任意で返還会をつくり、県に50万円を返したいという申し出があった、との説明が知事からあった。
そして、これは県がそうした返還を呼び掛けたわけではなく、あくまで関係者からの自主的な申し出によるものだという説明。
続いて、マスコミから、「その返還会には何人ぐらい入っているのか」という問いがあったが、これに対して、佐竹知事は、
「私のほうで処理していない。公のことではなく、個人・プライベートのことなので。私のほうでは何人ぐらいがこの問題に関係したのかわかりませんので。」
と答えた。
後半、またマスコミから、「返還会はあくまで自主的、という話だったが、監査委員会からは県としての対応を行うよう勧告されており、そうだとすれば県としての対応が別途必要だと思うがどうか。」という問いがあり、これに対しては、
「(地方自治法に基づいた損害賠償請求を行うとすれば5年の時効要件があるため損害額全額が戻ってこないため)、県としては自主的な返還を受け入れるということをもって、対応したという形にしたい。」
と知事は答えた。
さらに、「職員の処分などは行わないのか」という問いに対しては、
「(現在の課長を除き、過去の担当課長が全員退職しており)、退職者に対して処分はできない。現在在職している者は、この誤納問題をむしろ発見した者であり、発見した者を処分するのはおかしい。」
と答えた。
それに対してマスコミから、「問題が発覚したのは、21年12月で、それから既に2年以上が経過しているが、この誤納が今まで公表もされてこなかったという点についての責任や処分、スピード感はどう考えるか。」
という問いに対しては、
「22年に、この問題について在職者を処分しない、と決めた。処分する場合には私に必ず書類が上がってくるが、そうではなかったので・・・。ただ、ミスがあった場合には速やかに公表して幅広い判断を仰ぐべきということは確か。」
と答えた。
最後にもう一度、「在職者への処分は行わないのか」という質問に対しての答えが、冒頭の「バットでぶん殴る」発言である。
さて、県民の皆さまはこのやり取りをどうお感じになられるだろうか。
結果的に50万全額が補てんされるなら形にはこだわらない、という合理的なお考えの方も当然おられるだろうし、私も退職者に損害賠償などをしても仕方ないと思う。
何事にもミスはある。一時、一瞬のミスもあれば、今回のようにそのミスが積み上がってしまうこともあるだろう。
だとしても、返還はプライベートで公ではないから、何も解りません、私の範疇ではありません、と言ってよいのか。損害を与えられたというのが県の立場だとするなら、その答えは何やら大変無責任に聞こえる。
私が知りたいのは、ただ1点、「発覚時点で公表しなかった理由」と「処分をしない、公表しないと決めた者が誰か、そしてその責任」である。トップである知事が知らないところでそうしたことが決められたということを知事自身がおっしゃっているわけだからなおさらである。
そして、佐竹知事に言いたいのは、仮にも県行政を司る者として、こうした問題への対応を問われた場面で、バットで殴るのが一番の処分だ、などと傲然とおっしゃるのは、県民の皆さまと、県庁職員の方々への侮辱だということ。
地方公務員の懲戒処分は、免職、減給、戒告など何種類かあるが、それは全て地方公務員法という法律に定められている。
法律に定められていない処分ができないのは言うまでもなく、江戸の殿さまなら「百叩きの刑」もできたかもしれないが、現代の知事には「バットでぶん殴る」という処分は無理なのである。
こういう「法律上許されていない空想話」を用いて、現実的な損害に対する対処方針を語るのは、50万とはいえ、損害を被った血税、損害を受けた県民の皆さまへの最大の侮辱であると私は思う。
そしてまた、バットで殴るのが何よりだ、などと言われば、正直、私が在職時なら、これが自分が付き従っているリーダーか、と心寒くなっただろう。
肉体的痛みを与えるのが組織を律するのに最も効果的だ、という組織はもはや何かの武装集団のようですらあるし、これまた行政府の一員として仕事をされてきている職員の方々に対して無礼である。
余計なおせっかいかもしれないが、県職員組合としても、しっかりと訂正を申し入れるべきではないか。
多くの職員のモティベーションに関わる。