今日は自戒も含めて少し情緒的な話をさせていただきたい。
震災直後の3月17日に戦後最高値となった1ドル=76円台前半に迫るような状況が続いている。
3月には、日米欧の協調介入によって、80円台まで水準を戻したが、この時には、様々な憶測が交差する中での一時的な「震災ショック」だったため、市場介入の効果もあった。
しかし、今回の円高傾向は、そもそもドルの信用力の低下、「ドルの没落」に原因があるぶん、日本政府が少々市場介入したところで、焼け石に水、効果は望めず、1ドル=70円を突破するのもそう遠くはないという予測も市場には流れている。
トヨタは、先に、「1ドル=80円は、日本でモノづくりをしていく限界を超えている」と言ったが、そのトヨタがかろうじて、国内生産比率5割を保っている以外、日産やホンダなどは既に国内生産比率は3割を切っている。
つまり、大手企業の「海外への引っ越し」はとっくに進んでいる。
秋田県にとっても、リーディング産業である電子部品業界は、円高の影響を受けやすく、代表企業であるTDKは、1円円高になれば、売上高は55億円減少すると説明しており、この「円高」は秋田にとっても大変重要な問題となっている。
しかし、この円高対策は、地方自治体としては中々手を出しようがない。「市場への介入」などできるわけもなく、地場の企業に必要な資金を流し込むというぐらいの、「守備的政策」しか打つ手がないというのが正直なところだ。
震災による直接・間接被害への支援として、県が銀行等を経由して県内企業に融資した額は、この8月に入って500億を超えようとしている。
間もなく、震災から半年を経過することもあり、「震災被害に対する緊急融資」という目的でスタートしたこの融資枠は、8月いっぱいで終了する見込みだ。
借りたお金は返さねばならない。そこにこの円高だ。円高に効く特効薬は地方自治体はおろか、政府・日銀にすらない。
このお盆、帰省してきた友人らをはじめ、いろいろな方々とお話させていただいた。
どこに行っても、誰と話しても「秋田に働く場を」と言われる。
特に、高齢者の方などが「子供も孫もみんな県外で暮らしてるし、あと戻ってこね。お盆も帰ってこねな」と苦笑いしながら話されたり、「孫が秋田に戻ってこれるような働く場所があれば」と訴えられると、本当に心が痛む。
議会改革も大事だ、情報公開も情報発信も大事だ、しかし、この「雇用確保と産業振興」ということについて、正直に、自分はまだ何事も為し得ていない。
企業は、日本がダメなら海外に行ける。法人税が高い、電力が高いから、といって海外に移れる。
しかし、国民はそういうわけにはいかない。
消費税が上がるから、住民税が高いから、といって海外に移住できる人は少ない。
大部分の日本人は、放射能の雨が降ろうが、税金が上がろうが、電力料金が上がろうが、給料が下がろうが、「ここ」で暮らしていくしかない。
この秋田に暮らす人たちもそうだ。誰でもいいから、どの政党でもいいから、どういう手段でもいいから、「暮らしを良くしてくれ」という悲痛な声が秋田に満ちている。
国も自治体も、総理大臣も首長も、国会議員も地方議員も、国家公務員も地方公務員も、この厳しい時代の痛切な国民の声に、最大限の焦燥感と行動力で応えていかなければいけない。
やれることはないのか、やれることは全てやったのか。ただの「シゴト」と割り切ってはいないか。
原発対応で事実上更迭された経産省の事務次官などの退職金が、「自己都合」ではなく、「組織からの勧奨退職」によるものとして、上乗せ支給され、7000万前後になるそうだ。
情緒的な物言いはあまり好きではないが、「参る」墓さえ流され、跡形もなくなった被災地の方々の前で、7000万の退職金を積み上げて、堂々と受け取れるものなら受け取ってもらいたい、と誰しも思うのではないか。
私も、フンドシを締めて、仕事をしなければ。