4月からの消費増税を控え、全国の自治体で料金や使用料の値上げの準備が進んでいる。
本県でも、体育館、プール、運動場などの体育施設、県民会館やアトリオンなどの芸術文化施設、男鹿水族館やホテルなどの県が所有する観光施設など、一斉に値上げが予定されている。
消費税5%を織り込んだ料金設定であったのだから、8%になるのに合わせて3%分の値上げが行われる、ということならばこれはやむなし、という理解をしたいところだ。
ただ、それとて民間企業や町の飲食店では、わずか10円、20円の値上げができずに、価格を据え置いたり、経費節減でカバーしようとしたり、というところも多いのだから、増税即値上げ、というふうにできるのは、ある意味では公共施設ならでは、と言えるだろう。
本来ならば、公共施設とてそうした経営判断や収支分析の上に、値上げをするかどうか、の判断があってしかるべきだ。
そういう思いでいる私にとって、どうしても理解しがたい県有施設の値上げが1つあった。
秋田市にある産業技術センターという施設は、あまり一般の方にはなじみがないかもしれないが、これは主に県内企業等の技術開発や新商品開発などを支援するために作られた県の研究機関だ。そして、ここにはそうした企業等が利用するための研究室や研修室、様々な設備があり、これは有料で借りることができるようになっている。
そのうち1つの研修室の利用料金について、現在1000円(午前9時〜正午までの3時間)となっているものを、1200円にするという値上げ内容が議会に提案された。
1000円を1200円にするというのだから、これはどこからどう見ても3%どころか20%アップである。
これがどうしても解せずに、私自身かなり激しく追及をした。
しかし、県側はこれをあくまでも5%→8%の増税分だけの値上げでしかない、と主張する。さっぱり意味がわからず、計算方法を訊いたところ、次のような答えが返ってきた。
「この研修室の利用料金は1時間当たり333円。この333円に1.08を乗ずる(8%ぶん)と、359円になる。ここで10円単位を四捨五入して、1時間あたり400円とした。それで3時間だから400円×3時間で1200円となる。」
359円を400円にいきなり切り上げるというのだから、この時点で3%どころの話ではなくなっているのだが、私が続けて「それでは、現在の1000円というのはどういう計算の仕方をしているのか」と問いただすと、これまた不思議な答えが返ってきた。
「現在の1000円という料金設定は、1時間あたり333円に、3時間を乗じて、999円とする。そしてこの999円に1.05(5%ぶん)を乗じると、1048円になる。そこで10円単位で四捨五入して1000円とした。」
皆さん、お分かりになるだろうか。
現在の1000円という料金設定は、333円という単価に時間数を掛けて、最後に5%を乗せている。
しかし、今回の値上げ案は、333円という単価のところで8%を掛けて、切り上げし、それに時間数を掛けている。
つまり、計算方法が変わっているのだ。
私がどうして、こんな細かいことをくどくどとここに書いたかと言えば、まさにこうした計算方法や値上げの論理こそが、利用者不在、県民不在のやり方だと言わざるを得ないからだ。
利用者は3月31日まで1000円だった研修室が、4月1日から1200円になる、その200円の値上げを見て、「ああ、これは消費税が上がったぶんだな」と素直に理解するだろうか。
あるいは、そのことを問われたとき、センターの方々は「消費税の値上げ分です」と胸を張って説明できるだろうか。
このセンターの値上げは一例だ。このほかにも解せない値上げが今議会に様々提案されている。これらの値上げを議会が認めるということは、その値上げについての説明責任も議会が負うということだ。「電気料金が値上がりしているので」などといって消費税の増税分以上に上乗せ値上げをしようとしている施設もあるが、こうしたこともしっかりと吟味しなければならない。
官製「便乗値上げ」を許してはならない。