ブログ

地方版固定価格買取制度。

2012年07月25日

 岡山県真庭市。

 バイオマスタウンとして有名なこの場所を訪れた。

 豊かな森林資源と、それを背景とした世界でも最大規模の集成材生産量を誇る製材企業などが立地する中で、製材後のかんなくずや残材を、ペレットにする、あるいはバイオマス発電に活用する、といったことを行っている。

 同時に、家畜の糞などは堆肥化し農業に活用、家庭用の廃油の回収をしてBDFにするなど、森林資源の活用にとどまらない、「エネルギーの地産地消」を地域全体で取り組んでいる。
 こうした取り組みが全国的にも評価され、「バイオマスツアー」として全国から人々が訪れる。その方々からは料金を徴収し、様々な見学メニューを提供している。

 全体として、もちろん非常に参考になる取組であるが、私が最も関心を持ったのは、「バイオマス発電」であった。

 何と言っても、秋田県の森林資源だって立派なもの。大型製材工場も稼働を始めた。
 秋田で森林資源を活用したバイオマス発電がもっと具体化してもいい。

 真庭市には30社ほどの製材企業があるそうだ。
 木は山で切り出され、林道などを使って、それぞれの企業に運び込まれ、製材される。
 切り出された時点で、山には「林地残材」と呼ばれる残りものが、製材後には、当然、木材を剥いた後の「樹皮」や、削ったあとの「かんなくず」が出る。
 これらは全て、バイオマス発電やペレットストーブの原料などに再利用できるのだが、一番の課題は、これらを効率よく「集める」ことができなかったこと。
 山から残材を運び出すのも、各企業からかんなくずなどを運び出すのも「コスト」ということになる。

 そこで、真庭市では独自の「固定価格買取制度」を始めた。
 林地残材について、杉、ヒノキ、雑木など樹種ごとに一トン当たりの買取価格を決め、バイオマス発電所まで持ってきてもらえれば、それを固定価格で買い取るというものだ。
 今まで、お金にならなかったものがお金になる、ということでこうした残材がどんどん運びこまれるようになった。
 各企業で廃棄コストがかかっていた樹皮なども、バイオマス発電所に運び込めば廃棄コストが不要になる。ということで、これもまた集まり始めた。

 こういう地方独自の買取制度というものがこの全国でも珍しい、木材専用のバイオマス発電所の成立の背景にあった。

街を育てる。

2012年07月22日

 秋田の夏は短い。

 隣の青森ではねぶた祭りが終わればもう夏は終わりだ、と言われるほどだし、事実、8月半ばともなると街を吹き抜ける海風の中に秋めいた空気を感じるほどだが、秋田の夏もそれほどではないにしろ、短い。

 四季は、暮らしを規定し、行動様式やマインドをある意味では支配する。

 土地に縛られない、地域を固定しない生き方を選んだ人はさておき、大方の、「どこか」で生きることを選んだ人たちにとっては、その「どこか」の四季や、風や、匂いや、土が、その人の暮らしを良くも悪くも決めていく。

 その短い夏にかぶりつくように県内各地で様々な行事、祭りが開催されている。
 竿燈祭りをはじめ、大きな祭りはこれから、というものも多々あるが、秋田市内では今週末、「なかいち」がオープンした。

 週末ともなれば満員御礼でごった返す、郊外のショッピングセンターが移転してきのかと思うほどの人混みであったが、おそらくは、大半が秋田市民の皆さまであったのではないかと思う。

 駅伝など様々なオープニングイベントがあったが、私がその中で参加したのはたった1つ、美術館の設計者、安藤忠雄氏の講演会であった。

 安藤氏が、この美術館にどんな想いで向き合ったのか、紆余曲折ありながらも誕生したこの美術館とともに生きていくことになった私たち秋田県民が、「秋田」を既定する新たな1つとなったこの美術館がどんな想いから誕生したのかを知ることはとても意味があることだと思ったからだ。

 講演の冒頭、安藤氏はハッキリとこうおっしゃった。
 「自分は古いものを大事にするべきだと思っている。だから現美術館を活用してはどうかと申し上げた。しかし、耐震などの問題もあり、移転する、とこういうことであった。」と。

 100年未満の建築物に文化的価値はない、と言い放って、今の美術館の価値を認めなかった佐竹知事とは真逆である。

 その上で、

 「美術館を設計したのは私だが、美術館を育てるのは県民の皆さん。どうか、育てていってほしい。」ともおっしゃった。

 街や地域が人を育てる、とは昔からの言葉だが、今はその逆で、人が街を育てる時代になった。
 そこにしかいない一人ひとりが、そこにしかない街を1つ1つ育てていく、という時代。

 その意味で、地方の行政や政治が担う役割は、「まちづくり」ではなく、まちづくる「人」づくり、だろう。

 私自身の職業的観点としては、このエリアが、文化的「地産地消」の核となっていくのか、「地産外消」の観光拠点となっていくのか、これからの「なかいち」は、そのビジョンを明確に持たなくてはいけないと感じた週末であったし、「点」を「面」にする努力は、「点」を作る以上に長く大変なものになる、とある種の重い覚悟を持った時間でもあった。

 盛り上がってるからいいね、人がいっぱい来ていていいね、と素直に喜べない、のではないく、敢えて「喜ばない」精神で、この県都秋田市の新たな「点」について、責任を果たしていきたい。

中泉議員様。

2012年07月19日

 久々に、中泉松司議員のブログに実名登場させていただいた。
 私などとは比較にならぬほどにお忙しく、いろいろな重圧も背負っておられるであろう中泉議員の貴重な時間と思考の一端を割いていただいたことは大変嬉しい。

 また、主義主張の違いはあれ、1つのテーマについて、こうしてオープンな場で議論をさせていただけることもまた、「県議会を開く」という意味でも大変ありがたいことだと思う。
 議論というのは独りではできない。

 テーマというのは、私が数日前にこの場で取り上げた「秋田市の未来づくり交付金」の使い道、すなわち、旧農業試験場跡地で「園芸農業の研修を」という10億円のことである。

 中泉議員のブログにおいて、私が、あたかも農業切り捨て論者のように言われている。
 私の先日のブログを読んでいただければ、私が一言も「農業切り捨て」と言っていないことは明らかなのだが、どうも「農業」に精神的あるいは政治的プライオリティを置かれている方々からすると、私の主張はそういうふうに映るらしい。

 とはいえ、やはり将来を嘱望されておられる中泉議員が事実誤認されたままに論理展開されるのは、ご本人も望むところではないと思うので、この場で改めて、私が委員会において述べた意見をここに記したい。

 ・秋田市には、大学やインフラ、なかいちなど、県都秋田市にしかない強み、資源が多々ある。
 ・秋田市の農業生産は、秋田市のGDPの0.4%でしかない。
 ・こうした中で、園芸農業の振興に10億使おうというときに、「教育」や「市街地活性化」や「他の産業分野の振興」など様々な政策の中から、この「園芸農業」を選んだのか。
 ・そういう政策選択の段階から、県と市が一緒に議論してこその「協働」ではないのか。
 ・いろいろな政策課題がある中で、この園芸農業に10億を投入するのだ、という優先度・選択というものを県も市も、納税者にしっかり説明しなくてはいけない。

 以上である。

 なぜかこういう主張をすると、「農業切り捨て」のように捉えられるが、本当に農業を守りたいならば、そういう様々な政策、様々な産業がある中で、しっかりと農業の「価値」や「位置」を主張して、堂々と10億円の価値を説明されればよいのであって、「切り捨て」と叫べば農業が守られるなら、今の日本の農業はこんなふうになってはいないのである。この情緒性こそが自民党の農政失敗の根幹そのものではなかったか。

 それからもう1つ、「農地の5年無償貸与」についても、中泉議員のご意見は「このご時世に新規に営農したいという新規就農者に土地代を払えというのは酷だ」とおっしゃっておられる。

 このご意見も私には理解が難しいのだが、どうして農業だけがそうして特別扱いされるべきなのか、の理由が「このご時世」という一言で片付けられているのが大変残念だ。
 今、どの分野であれ厳しい競争がある。その中で、若者が創業・起業しようとすること、その難易度に「農業」も「IT」も「福祉」もないのではないか。
 他のどの業種・業界に、土地や設備や店舗を役所がタダで用意してくれて始められるものがあるのか。
 むしろ、所得補償政策がある時点で、他の産業よりは既に「守られている」点があるのではないか。

 農業だけが大変で、農業だけが「このご時世」で、農業だけが公益を担っているわけではない。
 地域の商店、その1つであっても、需要が減り続ける地域で、お年寄りなどの生活を支える公益を担っている。
 「他の産業との均衡を十分考えてもらいたい。なぜ、農業だけに県有地を無償で貸すのか。」
 私は委員会でそう述べた。

 農業をするのも納税者、農産物を食べるのも納税者、県有地も納税者の財産、である。

 中泉議員と直接この件に関して議論をしていないが、こういう場で論戦させていただけるのはありがたいことで、大いに議論を盛り上げ、県民の皆さまの関心を少しでも高められるならこれに勝ることはない。是非、次なる論理性に富んだ反論を期待したいものだ。

 

カレンダー
2012年7月
<<6月   8月>>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新の記事
カテゴリー
アーカイブ

沼谷 純はこんな人!

昭和48年3月
秋田市生まれ。仁井田育ち。
平成7年4月
秋田県庁入庁、企画調整課配属。
平成22年12月
政治を志し、秋田県庁を脱藩!
(退職)
平成23年4月
秋田県議会議員に初当選。
現在3期目。
令和3年2月
秋田県議会議員を辞職し、秋田市長選挙に挑戦。
令和5年4月
政治家として再始動を決意。
現在
秋田市横森在住。

詳しいプロフィールへ

事務所ご案内

〒010-0965
秋田市八橋新川向13-30

TEL 018-883-3383
FAX 018-883-3384

Googleマップへ